高島の宝物「雄大な自然」と「継承される職人」が手掛ける商品の数々。
それぞれのモノづくりへの工程、こだわりをご紹介します。
安心で持続可能な植物性原料100%
炎のゆらめきが一目瞭然の燃焼の美しさ
滋賀県伝統工芸品和ろうそく
取材先:
近江手造り和ろうそく 大與(ダイヨ)
滋賀県の指定伝統工芸品である”和ろうそく”。日本でも数少ない生蝋手掛け製法の伝承者、職人が1本1本手作りで丁寧に仕上げています。国産櫨蝋を100%使用しているので、油煙もほとんど出ることがなく、蝋がだらだら流れることもありません。燃焼の安定度が高く風合いも美しいのが特徴です。
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櫨はウルシ科の植物で、その実から搾取される櫨蝋は江戸中期に最も使用されました。櫨は稀少性が高く、日本でしか採取できません。それゆえ、現存する蝋の中では、最も高値で取引されています。融点と凝固点が他の蝋に比べて低く、人の手で触れることができます。和ろうそくにしたときの燃焼は、群を抜き、最高の灯りを創り出す唯一の素材。
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ろうそくの燃焼において、芯は重要な役割を果たすします。そのため、芯づくりは非常に重要な工程の一。和ろうそくの芯は、灯芯草(い草の仲間)の随と和紙で作られており、一本一本手作業で、和紙の上に灯芯草が巻き上げられ、真綿で止めて作られます。
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生蝋手掛け製法とは、古来より伝わる和ろうそくの製造方法。右手で串を回しながら、左手で蝋を塗り重ねて太くしていきます。
一人前の職人になるには、十年と言われ、国内においても、この技術を習得している人間は、わずかに十人程度と言われています。
和ろうそくの魅力
これらの素材、技術が結集され、
和ろうそくは出来上がります。
ろうそくの燃焼は溶けた蝋を芯が吸い上げて燃えます。
植物性の蝋は芯へ浸透する力が弱く、表面積の広い芯を使わなければ蝋を吸い上げられず、余った蝋は外へ流れます。反対に吸い過ぎると、炎が立ち、油煙が多く発生するため、燃焼は、芯とその周りの蝋のバランスで成り立っています。
そのため、職人は芯に合わせた分だけ、周りに蝋を重ねてゆきます。
余分な油煙を出さず、蝋を過剰に流れさすこともない。
ぬくもりのあるゆらめきのある灯り…。
和ろうそくが作る、幽玄の灯りとは、このようにして生み出されます。
滋賀県伝統工芸品雲平筆
取材先:
攀桂堂(ハンケイドウ)
400年の継承された滋賀県高島市の誇る伝統技法「雲平筆」。今からおよそ400年前の元和年間、初代藤野雲平が京都において筆工を営んだことが始まりです。昭和41年に十四世雲平氏が滋賀県指定無形文化財の認定を受け、昭和天皇・皇后両陛下と当時の皇太子・同妃両殿下、平成になってから現在の皇太子・同妃両殿下に技術の台覧を賜りました。雲平筆は天平筆、筆龍藤巻筆、大師流筆、定家流筆、上代様筆など、和紙を巻く巻筆の技術を今に伝えています。
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数種類の動物の毛の中から、筆の用途に合わせて毛を選別し、混ぜ合わせることで作ります。動物によって毛の特徴が異なり、個体によっても質が異なるため、どの毛をどれくらい混ぜるのか、その見極めは熟練した筆師にとっても難しく、筆の出来を左右する重要な工程です。
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灰で毛の油分を落とし、墨含みを良くします。くしを使って灰を落としながら、枝毛や切れ毛、クセのある毛を取り除きます。そして、毛を円錐形に整え、麻糸でしっかり縛り固定する「尾締め」を行います。
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特有の弾力を生み出す工程で、麻糸で縛った穂の部分に、手でしっかりと和紙を巻いていく作業。この作業の出来が筆の出来を決める、と言われるほどの極めて重要な工程です。筆師は指先に全神経を集中させ、絶妙な力加減で慎重に、かつ、しっかりと和紙を巻かなくてはならず、鍛錬された技術が求められます。
雲平筆の魅力
1つの筆が出来上がるまでに、職人の手による多くの工程、技術を要し出来上がります。「雲平筆」は芯毛を上質の和紙で巻き固め、さらに上毛をかけて麻で強く締めるという製法をとる巻筆は、腰が強く、弾力に富んでおり、力強い墨線を生む筆として書家に根強い人気があります。
現在では巻筆を作る筆師は、日本で2人になってしまい、滋賀県の伝統工芸品に指定されている貴重な筆です。
全てが手作業になり、原料の動物の毛の選別には目をこらし、工程の中の「芯立て」に特に時間をかけています。
書き手がより喜んで戴けるようにと精魂込めて作られる「雲平筆」
作り手のこだわり、歴史、想いが深いからこそ表現されるやわらかく弾力のある書き味をぜひご体感ください。